2024年5月10日に発生した約21年ぶりの巨大磁気嵐(
※6)により、世界各地で低緯度オーロラが観測され、プラズマ圏の急激な構造変化や全球的な電離圏嵐がGNSS受信機網などで捉えられました。本研究では、JAXAの探査衛星「あらせ」と地上GNSS受信機網で観測された電離圏全電子数(TEC)観測(
※7)を組み合わせ、電離圏嵐がプラズマ圏の回復に与える影響を解析しました。あらせ衛星の電子密度データを用いて、磁気嵐後のプラズマ圏の回復過程を詳細に追跡した結果、プラズマ圏の回復に4日以上を要していたことがわかりました。過去77例の磁気嵐におけるプラズマ圏の回復時間を調べたところ、今回の事例では、プラズマ圏の回復時間が極端に長いことが判明しました。GNSS受信機観測網によるTEC解析では、北半球全域で電離圏電子密度が50~90%減少していました。今回の観測でプラズマ圏の回復に時間がかかった原因は、電離圏からプラズマ圏へのプラズマ供給が抑制されたことによるものと、結論づけられました。