光時系
光時計はマイクロ波時計より小さい不確かさを持つため、国際単位系の一秒を光時計で定義することが議論されています。光時計で秒を再定義するためには、我々の社会生活で使用する時刻が刻む一秒も光時計でその精度が維持される必要があります。そのため、我々はマイクロ波周波数標準である水素メーザーの周波数を光時計で校正し、校正結果に応じてその周波数を微調整するためのアルゴリズムを開発する[1]ことで正確な時刻信号を発生する研究を進めています。そして、その成果を利用して現在の日本標準時は既にストロンチウム光格子時計が示す周波数によって精度を上げた形で発生しています。図は日本標準時と協定世界時の時刻差を示していますが、光格子時計による標準時の周波数調整を開始した2021年9月以降に時刻差が減少し標準時の精度が向上していることを確認出来ます。
また、ここでは時系信号の源発振器として水素メーザーを利用していますが、これをレーザーにすることによって、完全な光時系を実現することも期待されています。光共振器に安定化されたレーザーの周波数安定度はマイクロ波発振器よりも優れているため、完全な光時系とすることで、短期から長期まで全域にわたって現行のマイクロ波時系より高い安定度を実現出来ます。
参考文献
1) H. Hachisu, F. Nakagawa, Y. Hanado and T. Ido, Months-long real-time generation of a time scale based on an optical clock, Sci. Rep. 8 4243 (2018)