• English
  • 印刷

情報通信研究機構(NICT)で生成されている日本標準時は,様々な方法で広く日本国中に供給され,非常に多くの方に利用されており,現代社会では標準時は高い信頼性と精度の両方が要求される社会インフラのひとつになっています。

日本標準時は長年にわたり,NICT本部(東京都小金井市)に設置された一極集中型のシステムで運用を行なってきました。しかし,日本は地震大国であり,2011年の東日本大震災を契機に,被災リスクの軽減化を図るため分散型のシステム構築に取り組みました。本部が被災などにより日本標準時の生成・供給が困難となった場合に備え,神戸にある未来ICT研究所内に副局を構築し2018年6月10日より運用を開始しています。神戸福局には,本部から水素メーザを2台とセシウム原子時計を5台移設 し,独自の時系を生成することで、神戸副局のみでも運用が可能なシステム構成となっています。また、NTP Server光テレフォンJJYのシステムも稼働しており、標準時のサービスも継続することが可能な体制となっています。

神戸副局に設置した,衛星双方向時刻比較用のパラボラアンテナと,日本標準時生成のための計測システム。

一方で,標準時生成のためには多くの原子時計の時刻差データを平均化する方が有利であることから,本部と神戸副局に分散された原子時計間の時刻差を高精度に測定するため,静止衛星や測位衛星を利用した時刻比較リンクを構築しています。

一極集中型の日本標準時システムは,被災リスクなどの軽減を図るため,神戸副局と標準電波送信所に分散された原子時計と衛星時刻比較リンクによる分散型システムへと移行しました。

NICTでは,標準周波数を国内に供給するために,福島県と佐賀県・福岡県の県境の2箇所に標準電波送信所があり,送信所にもセシウム原子時計を設置しています。分散化システムでは,送信所に設置されている原子時計も日本標準時の生成に利用しています。

小金井で生成している日本標準時UTC(NICT)と神戸で生成している時系の時刻差